ブランド構築とは、簡単に説明するとブランドの価値を高めることです。この記事では、一般人や個人でブランドを立ち上げたいと考えている人に向けて、ブランドの立ち上げ方法や成功例を紹介しています。
ブランド構築とは
ブランド構築とは、提供する価値やメッセージを明確に伝え、消費者と良好な関係を築くことを目的としたマーケティング手法の1つです。具体的には、ブランド名やロゴマーク、パッケージデザインなどを活用し、消費者に特定のイメージや感情を呼び起こすよう働きかけます。
ブランド構築を通じて「この分野といえばこのブランド」という地位を確立できれば、商品やサービスが同業他社より際立ち、消費者に選ばれやすくなります。
ブランドを構成する要素
ブランドを構成する要素は、大きく分けて2つあります。1つはブランドにどのようなイメージを持ってもらいたいのかを中心に考えるブランドアイデンティティ、もう1つはブランド自体の価値です。
ブランドアイデンティティ
ブランドアイデンティティはブランドの核となる理念や価値観を象徴するもので、代表的な要素は上記の4つです。すべての要素をブランドの核と一致するように設定することで、一貫性のあるイメージを消費者に与えられます。
1.ネーミング
ブランド名やショップ名は、商品やサービスの第一印象を決定づける重要な要素です。効果的なネーミングは、ブランドのイメージや世界観を消費者に伝えられるうえに、記憶に留めやすくなるため、集客や販売に良い影響を与えます。
ブランド名やショップ名を決める際は、ブランドの理念を表現することに加え、独自性や覚えやすさも考慮するとよいでしょう。ホームページを使用する予定がある場合は、ブランド名やショップ名がドメインとして使用できるかをあわせて確認することをおすすめします。
2.デザイン
デザインはブランドの顔ともいえるもので、ロゴマークや色彩、キャラクター、パッケージなどの要素があります。ロゴマークはブランド名を視覚化したもの、色彩はブランドの性格を表現し、キャラクターは親近感やブランドのストーリーを伝える手段として有効で、一貫したブランドイメージを構築することでブランドの独自性と魅力が際立ちます。
3.キャッチコピー
キャッチコピーは、ブランドを端的に表すメッセージです。ブランドの特徴や理念を簡潔に伝え、消費者の心を捉えましょう。キャッチコピーの形式はさまざまで、ブランドの意志を宣言するもの、独自の強みを強調するもの、事業内容を明確にするものなどがあります。
消費者の記憶に残るキャッチコピーを作ることは、ブランドを形作り、認知度を高めるのに役立ちます。
4.ストーリー
ストーリーは、ブランドを消費者の心に根付かせる手法の1つとして有効です。たとえば、創業の背景や理念、挫折と成功の物語は、商品やサービスに命を吹き込み、消費者との間に感情的なつながりを構築します。その結果、消費者から信頼や共感を得られ、売上を伸ばすことにつながります。
ストーリーの発信には、ウェブサイトやSNSがよく利用されています。それぞれのブランドが持つ特別なストーリーを伝えることは、ブランドをより魅力的に見せる有効な手段です。
ブランドの価値
1.商品やサービスの品質
商品やサービスの品質は、ブランドの信頼性を決定づける要素です。消費者の期待に応えられる商品やサービスを提供し続けることで、品質を高められます。ロングセラー商品はその代表例で、商品やサービスが一貫して高い品質を維持していることが消費者に安心感を与え、購入し続けてもらえる要因となっています。
2.ロイヤリティ
ロイヤリティとは、消費者がブランドに抱く信頼や愛着を意味する言葉です。ロイヤリティをうまく高められると、消費者が繰り返し購入を行ったり、友人におすすめしたりしてくれます。その結果、市場でのブランドの地位確立や収益の安定化が期待できます。
ロイヤリティを高めるには商品やサービスが高品質であることに加え、マーケティングを通じて消費者と良好な関係を構築することが欠かせません。そのために、前述のブランドアイデンティティが重要になります。
3.認知度
消費者がブランドをどれほど知っているかを示す指標が認知度です。ブランド名やロゴマークを目にした際、消費者がブランドに関する情報をどれだけ正確に思い浮かべられるかが認知度の高さを示します。認知度の高いブランドは消費者の信頼を得やすく、選ばれやすい傾向にあります。
ブランドの立ち上げ手順
ブランドを立ち上げるには、上記の流れで準備を進める必要があります。
1.市場を調査する
ブランド構築を始めるにあたって、まずは市場調査を行い、ターゲット顧客の嗜好やニーズ、競合他社のブランドについて把握しましょう。市場調査の手段として、販売する商品やサービスに関連する言葉をGoogleで検索したり、ターゲット顧客のSNSを分析したりするなどの方法が挙げられます。
SNSからはターゲット顧客の言葉遣いや習慣などの傾向を把握することも重要です。より細かく分析することで、消費者から深く愛されるブランドを構築することが可能になります。
2.ブランド名を決める
ブランド名の付け方にはいくつかパターンがあります。実在するブランド名をもとに、どのように名付けられているのかをまとめました。
- 造語:ポケットモンスター(ポケットに入るモンスターを意味する造語)
- 暗喩:ブラザー工業株式会社(家族の一員のような親密さを隠喩)
- 比喩:Amazon(世界最大のアマゾン川のようなシェアを獲得できるようにという比喩)
- 説明:日本航空(日本の航空会社であることを説明)
- 無関係な語:ソフトバンク(通信業界に属しながら銀行という語を使用)
- 自分の名前:ウォルト・ディズニー・カンパニー(創業者のウォルト・ディズニーが由来)
- 頭字語の使用:NTT(Nippon Telegraph and Telephone Public Corporationの頭文字)
上記のアイデアを参考に、自分のブランドや提供する商品やサービスに関連させつつ、消費者の記憶に残りやすいブランド名を考えましょう。
3.スローガンとキャッチコピーを作成する
ブランドが何を大切しているのかを伝えるために、スローガンとキャッチコピーを作成しましょう。まずはブランドの核を把握し、どのような消費者に向けてメッセージを届けたいのかを定めます。伝えたいことをシンプルかつ鮮明にし、消費者の感情に訴えかけるようなメッセージにすると効果的です。
たとえば、株式会社リクルートゼクシィなびのキャッチコピー「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです。」は結婚しない人が増えている現代に、結婚したい人を後押しするメッセージをキャッチコピーに取り入れ、広く認知されました。
また、ブランドストーリーを参考にするのも有用です。ブランドストーリーとは、商品やサービス開発時の苦労や、企業の成り立ちや使命、価値観を伝える物語のことです。ブランドの思いを色濃く出せるため、消費者からの共感も得やすくなります。
たとえばソニー株式会社は、PlayStation®5の開発までのストーリーをウェブサイトで情熱的に語っています。ゲームで遊ぶ人を第一に考え、一丸となって製品開発に挑む様子から、ソニーが大切にしている思いをはっきりと読み取ることが可能です。
このように、伝えたいメッセージや相手をはっきりさせ、心に響くように工夫を施すことで、効果的にブランド構築を実施できます。
4.ブランドを象徴するデザインを考える
ブランドのビジュアルは、消費者からの印象を左右する重要な要素です。まずは上記3つをもとに、ブランドを象徴するデザインを考えていきましょう。
ブランドカラー
ブランドカラーはブランドに持ってほしいイメージやターゲット層を明確にしたうえで、それに合わせた色にしたり、色が与える心理的な効果をもとに考えたりするとよいでしょう。たとえば、高級なイメージを与えたいならシックな色、元気や情熱を表現したいなら赤を選ぶなどです。
例として、株式会社イエローハットは危険や注意、警告を伝える際に使われる黄色をブランドカラーに用いています。自動車に関連する商品を販売するため、交通安全の意味を込め、注意喚起ができる黄色を採用しています。
サイトデザイン
サイトデザインもブランドイメージを構築し、訪問者の関心を引くのに重要な役割を果たします。設定したブランドカラーや色が与える心理的な効果を踏まえ、メインとなる色を1~2色選びましょう。色が多すぎると統一感がなくなってしまうため、注意が必要です。使用する文字フォントも見やすさを重視し、見出しと本文で2つ程度に絞るとよいでしょう。
また、文字だけでなく、商品やサービスの写真を入れたり、壁紙を設定したりするとブランドイメージが伝わりやすいサイトになります。使用する写真も色や雰囲気、大きさを統一することで、さらにブランドイメージを構築することができます。
具体例として、サイボウズ株式会社が運営する「サイボウズ式」は、青を基調にしたデザインで見る人に安心感を与えるようなサイトになっています。
ロゴマーク
- ワードマーク:文字を用いたもの
- レターマーク:イニシャルを用いたもの
- マスコットロゴ:キャラクターを用いたもの
- エンブレム:テキストと紋章を組み合わせたもの
- アイコン:記号やイラストを用いたもの
ロゴマークにはさまざまな種類があります。ブランドアイデンティティを反映させるには、どのようなログマークがよいのかを踏まえ、ふさわしいものを考えましょう。ブランドカラーを取り入れたり、サイトに掲載したときの見栄えを考慮したりすると、一貫したブランドアイデンティティの形成につながります。
ログマークは自作することも可能ですが、難しい場合はデザイナーに依頼するのも1つの手です。決定してきた要素をうまく取り入れ、ブランドを象徴できるロゴマークを作成することがブランド構築には欠かせません。
5.ブランドマネジメントを実施する
ブランドマネジメントとは、構築したブランドを適切に管理することです。ブランドの知名度を上げるためにマーケティングや広告戦略を考えたり、ブランドを守るために商標登録したりなどが挙げられます。
特にブランド構築において、マーケティングや広告戦略は重要な役割を果たします。その際、よく利用されるのがSNSです。SNSの発信からブランドを認知する人が増えているため、SNSマーケティングでは、手法1つで消費者に与えるブランドイメージが変わってしまうことを理解しておきましょう。たとえば、商品のみを端的に紹介する質素な広告は堅い印象を与える一方、カジュアルな表現が多く、人間味の溢れる広告は親近感を与えます。
このように、ブランドをより多くに人に知ってもらうだけでなく、ブランドイメージを守る働きも担うのがブランドマネジメントです。
ブランド立ち上げの成功例
上記2社は、ブランドを立ち上げて1年ほどで大きな成果を上げた企業です。ブランド構築の成功例として紹介します。
Knuth Marf(クヌースマーフ)
Knuth Marf(クヌースマーフ)は、アパレル業界未経験のチームにより立ち上げられたネット販売を中心とした洋服ブランドです。事業開始1年で、年商5億円を達成しました。
Knuth Marfの成功の秘訣は従来の業界常識にとらわれず、独自の視点で新鮮なブランドを生み出せたことです。そのブランドストーリーとして、メンバーの1人が保育士を辞めて22歳で起業したときの苦労話や心境などを語っています。
また、ブランドキャッチコピーを「胸がときめくような新たな自分に出会う」にしたことで、消費者はKnuth Marfの洋服を購入した未来を想像しやすくなりました。
このように、ブランドストーリーやキャッチコピーを使って商品への思いや消費者へのメッセージを伝えることで、ブランドへの信頼感や共感が得られ、ブランド構築に成功しました。
アパレルブランドを起業する際の戦略として、Knuth Marfのブランド立ち上げを参考にするとよいでしょう。
graey(グレイ)
graey(グレイ)は、環境・社会問題への取り組みを核に据えたアクセサリーブランドを立ち上げ、約1年間で月商5,000万円を達成しました。
graeyは、実店舗を持たずにECサイトで販売を行うことで、社会問題にもなっている在庫の大量廃棄を防ぐ取り組みを行っています。最先端の流行を取り入れつつ、ファストファッションが持つ問題を解決しようとするブランドの理念が、若者世代に支持されています。
また、ターゲットである若い世代の嗜好に合わせたトーンを抑えた色彩や写真など、一貫したブランドアイデンティティを確立したこともgraeyの成功の秘訣といえるでしょう。
成功例として挙げたKnuth Marfやgraeyは、独自の理念やターゲットに合わせたブランドアイデンティティでブランドを構築し、消費者からの支持を得ています。2社の成功例から、ブランド立ち上げには明確なブランド理念の定義やターゲット調査が必要だとわかります。
まとめ
ブランド構築はブランド独自の価値観を消費者に伝え、商品やサービスを際立たせる戦略です。ブランド構築にはネーミングやデザイン、キャッチコピーなどが不可欠で、いずれの要素にもブランドの核となる理念を反映させる必要があります。それだけではなく、商品やサービスの品質やロイヤリティ、認知度もブランド価値を高めるうえで欠かせない要素です。
ブランド構築できるECサイトを作るなら、Shopifyを活用するとよいでしょう。Shopifyはテンプレートも豊富で独自ドメインも取得できるため、ブランドアイデンティティを反映させたネットショップを簡単に準備できます。無料体験も実施していますので、ぜひ気軽に使ってみてください。
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よくある質問
ブランド構築の成功例は?
ブランド構築の成功例として有名なのはコカ・コーラです。コカ・コーラと聞いて、鮮やかな赤色や特徴的なロゴマーク、独特な瓶の形を思い浮かべる人も多いはずです。このように、ブランド名を聞いてすぐにブランドのイメージを答えられるのは、コカ・コーラが創業から一貫したデザインを使い続けたためです。
コカ・コーラの事例から、ブランド構築のために色彩やロゴマーク、パッケージなどのデザインが有用であることを理解できるでしょう。
ブランディングとは?
ブランディングとは商品やサービス、ブランドに対して統一されたイメージを形成することで、価値や競争力を高める戦略の1つです。広告だけでなく、消費者への対応を含めたすべての活動を通じて、一貫したブランドメッセージを届け、差別化を図ることがブランディングの目的です。
一般人でもブランドを立ち上げられる?
一般人でもブランドを立ち上げられます。手始めに、販売する商品やサービスの市場調査を行いましょう。ターゲットに定めた消費者がどのようなものを好むのかをインターネットでの検索やSNSの分析から把握します。
続いて、ブランド名やロゴマーク、キャッチコピーなどを通じて、ブランドのコンセプトを決定しましょう。
そのあとは商品やサービスの品質を高めつつ、SNSマーケティングを通じて消費者と良好な関係を築いたり、ブランドの認知度を高めたりしましょう。
文:Yukihiro Kawata